~第二章~ 一年生:夏休み

さて、思いがけなく母とともに乳酸菌サプリを摂ることになった私ですが、その変化は、本来の花粉症の症状を改善するよりも、まずほかのところから自覚され始めました。

ちょうどその頃、学校生活は夏休みを迎え、私は入学から始めていた音楽スタジオのバイトに精を出していました(私事ですが、音楽は幼い頃から私にとって唯一の趣味であり、没頭、熱中できる存在だったのです)。
いつものようにバイトに出向き、受付や掃除、機材の整備などを淡々とこなしていた夏休みある日、馴染みのお客さんである、年配バンドの一人に突然声を掛けられました。「お疲れ様。なんか明るくなったよね、最近」。彼の話した内容は、たぶん、こんなふうだったと思います。そのときの記憶が、実はあまり鮮明には残っていません。

だって、それまで受付で事務的な応対をお客さんと交わすことはあっても、そんな見ず知らずの人間と日常会話を交わす、あるいは声を掛けられるなんて、当時の私には驚異的だといえるくらい、非現実的なことだったのですから。だから、たぶん、そのときだって私は、ろくに言葉を返すこともできず、ほとんど挙動不審な対応をしてしまったのだと思います。

いまとなっては、私にとってその彼との些細なワン・シーンは謝罪したい恥ずかしい過去であり、一方では、すこしだけ微笑ましい思い出でもあるのです。

第三章