Home arrow コラム arrow 映画について arrow 帰ってきたジョン・マクレーン?(コラム)

帰ってきたジョン・マクレーン?(コラム) 印刷 E-mail

ダイ・ハード4.0』(Die Hard 4.0 / Live Free or Die Hard)を観た。がっかりした。

ダイ・ハード』シリーズ一作目は画期的な作品だった。その後の多くのアクション映画に影響を与え、主演のブルース・ウィリスの出世作になった。題名の意味するところは、「なかなか死なない」であり、製作当初、そのキャラクターに見合うキャスティングが考えられていた。アーノルド・シュワルツェネッガー、シルヴェスター・スタローン、バート・レイノルズ……。いずれも「なかなか死にそうにない」肉体を持つマッチョな俳優たちだ。が、結局その座を射止めたのは、これが映画主演二作目になるブルース・ウィリスだった。

ブルース・ウィリスは当時テレビドラマ『こちらブルームーン探偵社』で軽妙な演技を見せる人気の俳優であり、(『ダイ・ハード』の多くの場面が夜の設定になっているのは、彼が昼間は『こちら〜』の撮影をしていたからである)主演第一作目は『ピンク・パンサー』シリーズのブレイク・エドワーズ監督によるコメディ『ブラインド・デート』だった。アーノルド・シュワルツェネッガー他のマッチョな俳優たちがオファーを断らずに、さらには、『こちら〜』の共演女優シビル・シェパードが妊娠して、テレビドラマの撮影が中断されなかったら、ブルース・ウィリスのジョン・マクレーンは存在しなかったであろう。

このキャスティング、製作者の希望から大きくそれてしまったことは否めない。どこから見ても当時のブルース・ウィリスはマッチョには見えなかったからである。ではそれが映画の成功に陰を落としたかといえば、否である。そのアクシデンタリーに主演俳優がキャスティングされた作品は、シリーズが四作まで続く大ヒットになり、ブルース・ウィリスの出世作にもなった。

もしマッチョな俳優がジョン・マクレーンだったなら、これほどの成功は収めなかったであろう。ブルース・ウィリス自身が語っている『ダイ・ハード』の魅力は、
1.平凡な男が非凡な事態に直面する。
2.マクレーンは家族、国を愛し、保身する者を軽蔑し、権威を憎んでいる。
3.誰もマクレーンを止めることができない。
4.22年をカバーするストーリーの奇抜さ

これはブルース・ウィリス本人がアメリカの映画サイトの掲示板に書き込んだものとされているが、(映像も流れたとのことで、おそらく本人に間違いないだろう)この定義は正しいと思う。『ダイ・ハード』の一番の魅力は平凡な男が非凡な状況に直面することだ。非凡な人間が非凡な状況に対処することではない。

だが、『ダイ・ハード4.0』のジョンはとっても非凡だ。どんな状況にも決して慌てず、うしろから忍び寄る悪漢も気配で感じ取り、あっというまにのしてしまう。ヘリコプターも難なく乗りこなし、銃で体を撃ち抜かれても(自分で撃ったのだが)軽口を叩いている。うまく急所をはずしているのだろうが、その人体学の博識ぶりは平凡な人物ではない。

『ダイ・ハード4.0』の監督、レン・ワイズマンはこのシリーズの大ファンだとのことであるが、この第一の定義を守っていないのではないだろうか。(ブルース・ウィリスもプロデューサーのひとりになっているが岡目八目、彼も一作目の魅力を忘れてしまっている)

たしかにこの四作目、タイトルどおり、「なかなか死なない」主人公が登場してくるが、別にこれはこのシリーズの専売特許ではないし、画期的なことでもない。そもそも多くのアクション映画の主人公は「なかなか死なない」ものである。ウィリアム・フリードキンの作品で主人公がストーリー半ばで死んでしまうのを見たときは画期的だな、と思ったが、アクション映画の主人公が最後まで死なないのはごく当たり前のことなのである。

どうやらレン・ワイズマンはジョンにさんざん怪我をさせて、それでも死なないところが、この主人公の魅力だと思っているようだ。(ジョンの「怪我してる男はセクシーだろ?」というセリフからもうかがえる)

だが、くどいようだが、『ダイ・ハード』の魅力は平凡な男が愚痴りながらも、果敢に悪に立ち向かい、自分の機知でその危機を乗り越えるところにあるのだ。

『ダイ・ハード4.0』ではジョンが偶然にかなり助けられるところも気になる。トンネルの中では「偶然」際どいところで、飛んできた車には激突されず、最新鋭戦闘機F-35は「偶然」にもその高性能なミサイルを外しまくる。これでは「世界一ついてない」男どころかめちゃくちゃつきまくってる男だ。一作目では自らの機転のよさで難所を切り抜けていたのだが。

対立軸が一本足りないところも気になる。今回のジョンは多くの仲間たちに助けられる。FBIにもハッカーにも。しかし一作目のように「ひとりで」悪に立ち向かい、仲間からは疎ましがられなければジョン・マクレーンではない。信じてくれる者はほとんどおらず、権威を持つものからは邪魔され対立する(ブルースが語ったダイ・ハードの魅力第二項)。それでこそ「いつも間違ったときに間違った場所に現れる」不運のジョン・マクレーンだ。言い換えるなら、この四作目には「葛藤」がないのだ。主人公たちは次に進むべき道がわかっていて、ひたすらそれをまい進していく。迷いがない。アクションの激しさではなくて、ストーリーに埋め込まれたサスペンスでハラハラさせてもらいたかった。

制作費の多さからも見て取れるように、アクションの激しさがこの映画一番の「売り」なのだろうと思うが、これほど詰め込まれては、まるで「アクションシーン数珠つなぎ」だ。またその数珠はとても長く、一つひとつの珠はとてつもなく大きい。かなりいびつな数珠になっている。そしてでかい珠を全編につないでいるわりにラストのボス(ティモシー・オリファント)を倒すシーンはあっけない。一作目でアラン・リックマン扮するハンス・グルーバーが落下する印象的なシーンや、二作目の貨物機をジッポのライターで燃料に引火させて破壊するシーンと較べると地味な印象を与える。途中が派手なアクションで埋め尽くされているだけに余計に地味さが際立つ。(たしかに突きつけられている拳銃で自分を貫通させながら、相手を撃つという発想はマクレーンらしいけれども)構成の面からいっても、最後にクライマックス(一番激しいアクションとサスペンス)を持って来るべきである。

『ダイ・ハード4.0』はアメリカ国内ではブロックバスターとネームバリューのおかげで前作の興行収入を上回っているが、海外での興行収入では前作を下回ってしまった。『ロッキー・ザ・ファイナル』の成功のようにぜひ最後にもう一度原点に戻って最終作を製作して欲しい。やはりジョン・マクレーンは、普通のおっさんで、ばやきながらも決めるときには決める男でないといけない。



四作まとめて(限定品)
ダイ・ハード クアドリロジー DVD BOX (Amazon.co.jp仕様)

コメント

コメントを書く
名前:
タイトル:
コメント:



Powered by AkoComment 2.0!

< 前へ   次へ >