原作:ジョージ・R・R・マーティン 監督:クリス・コロンバス
キャスト マイケル・クラーク・ダンカン トミー・リー・ジョーンズ
英語に「タフ・ネゴシエイター」という言葉がある。 意味は「手ごわい交渉者」。この物語の主人公、ハヴィランド・タフはまさしく「タフ・ネゴシエイター」である。なにしろ、テレパシーを持っている愛猫を抱えて、相手の考えることを的確に読みながら交渉できるのだから。
風体は、身長二メートル半、細長い顔に禿頭で太鼓腹、全身の肌は漂白した骨のように真っ白。職業は、環境エンジニア。
環境エンジニアといっても、現代の「環境エンジニア」のように環境汚染の防止や抑制、改善策を提案するようなものではなく、宇宙の様々な惑星から集められた生物の細胞をクローニングし、その依頼主の惑星の環境を生態系から変えるという積極的な行為を行なう。
時は、いまから数千年後の未来。なぜタフはこんなことができるのかといえば、<方舟>号と呼ばれる千年以上前に遺棄された「生物戦争用胚種船」を手に入れたからである。この宇宙船、全長30キロ、高さは30メートルもある。持っている機能は遺伝子組み換え技術にクローニング技術、局所的時間コントロールと神にも匹敵する脅威的な力を持っている。そのときまでには<方舟>号以外ではそれらの技術はすっかり失われており、タフだけがその力をふるうことができる。
とはいうものの、この男、大きな野心を持つわけでもなく、数匹の猫をはべらせ、ひとり悠々と「環境エンジニア」として宇宙を渡り歩く。
このタフの「環境エンジニア」ぶりが愉快だ。ジャンルはスペースオペラといえるのだろうか。ハヤカワ文庫の帯には「宇宙一あこぎな商人タフの冒険を描く完全無欠の連作集」とある。「あこぎ」とまではいかないだろうが、冒頭にも紹介した「タフ・ネゴシエイター」なタフにかかっては、どんなツワモノもお手上げである。
さてこの作品、帯にもあるが、連作集である。全七作。邦訳一巻目は『タフの方舟 禍つ星(マガツボシ)』。その中でも表題になっている『禍つ星』が一番映像化に適しているように思う。
この『禍つ星』、製作された順番では四番目だが、一番はじめに集録されている。理由は物語の時系列では一番はじめであり、羽振りのよくない宇宙商人ハヴィランド・タフが生物戦争用胚種船<方舟>号を得る話だからである。
金に困っていたタフが、学者、技術者、ならず者といった曲者たちに雇われるところからこの物語は始まる。彼らの目的は、千年以上前に遺棄された伝説の生物戦争用胚種船を探すこと。個性的な面々はこの胚種船を手に入れるために争うことになる。
この物語を一般のスペースオペラと画するものは、この「胚種船」の存在だ。この船の能力は前述したとおりであるが、この船はありとあらゆる生物の胚や細胞を集めていて、それらを蘇らせることができる。
Tレックスをはじめ襟巻きドラキュラ、地獄の子猫、歩く蜘蛛の巣、土ころび……。ティラノサウルス・レックス以降は、地球の生物ではないため、想像は難しいが、<方舟>号の争奪戦にこれらの要素が加わるから、さらに物語は盛り上がる。
もしこの『禍つ星』を映画化するなら、ハヴィランド・タフ役には、『グリーンマイル』で死刑囚コーフィー役を演じたマイケル・クラーク・ダンカンはどうだろう。彼の身長は195cm。タフには遠く及ばないが、彼は穏やかな人物から、強面の人物まで演じることができる。ちなみにギネスブックによると世界で一番背の高い俳優は『ビッグフィッシュ』に出演していたマシュー・マッグローリーとなっている。身長は2m28cm。(残念ながら彼は2005年八月九日に亡くなっている)
タフにマイケル・クラーク・ダンカンを配することにはわずかながら問題がある。それは彼が黒人であるということだ。タフの全身の肌は「漂白した骨のように真っ白」と小説では設定されている。このことはノアの方舟のノアをイメージしているせいだろう。『聖書外典偽典』には、ノアの風貌は『彼の身体は雪のように白く、またばらの花のように赤く、頭髪、(ことに)頭のてっぺんの髪は羊毛のように白く、眼は美しく』とある。
それでもマイケル・クラーク・ダンカンの体格、演技力を考慮すれば、彼が一番ふさわしいように思う。
監督にはクリス・コロンバスはどうだろう。コメディ映画を多く手がける彼ならば、タフのユーモアを描けそうな気がする。
Powered by AkoComment 2.0! |